薬事法の歴史と現在

最終更新日 2024年4月30日 by frozens

薬事法は1960年に施行された旧薬事法を見直し、新しく作られた法律です。

元々は江戸時代にまで遡り、当時の江戸幕府の薬品取り扱い規制にルーツがあります。

明治時代には文明開化により、西洋医学を重視した売薬取締規制が1870年に制定したり、1877年には毒薬劇薬取締規則を施行しています。

薬局などでもお馴染みの日本薬局方は、1886年の体制下で誕生していて、現在まで改正を続けて用いられているのが特徴です。

大正時代には有害医薬品の取り締まり重視により、害がなければ薬効の有無に関係なく積極的に規制しないとしました。

これを無効無害主義といって、当時は許容されていたのが驚きです。

1910年になると、薬品の品質を確保する仕組みが確立されたことから、有効無害主義に転換して薬効のない薬品が規制されるようになっています。

現代にも通じる転換点で、やがて戦争に入り終戦を経て、今の法律へと繋がります。

戦時中は当時の厚生省により医薬品の流通が統制され、更に1943年に旧薬事法が制定されました。

この法律では不良医薬品の取り締まりに力が入れられていて、品質の適正化が行われているのがポイントです。

終戦の2年後、1947年には戦時中と新憲法の矛盾が多数見受けられ、見直しを図ることになっています。

戦後は物資不足で粗悪な医薬品が流通してしまい、事態を打開する必要が出ることになります。

1948年に制定されたのが現在の元となった法律で、旧来の抜け穴を見直したり、医薬品の製造や流通が政府と都道府県知事の登録制になりました。

政府が恣意的に運用できない制度に仕上げられているのも、この法律における特徴の1つです。

新制度の誕生の翌日には、医療法や医師法に保助看法など、複数の法律が一気に制定されています。

当面はこの体制で運用されていましたが、1960年には国民皆保険の健康保険制度発足により、改めて施行されることになりました。

1960年に行われた改正のポイントは、医薬品販売業に関する細分化にあります。

一般販売業では、薬剤師が処方箋に基づき医薬品を販売するか、医師が処方して販売することが認められます。

卸売一般販売業は一般販売業の一形態で、一般販売業に当てはまる業者のみ販売が許されます。

旧来の薬種商に似た名前の薬種商販売業は、ドラッグストアに関連する法律です。

他にも、置き薬の配置販売業に過疎地域の販売特例の特例販売業など、細分化により改められました。

これが現在の薬事法の骨格となり、1990年代の規制改革を経て現在に至ります。

医薬部外品における範囲拡張では、栄養ドリンクの取り扱いがコンビニでもできるようになります。

2001年の改正においては、化粧品の承認制度が廃止になり、新たに全成分の表示制度が導入されています。

配合禁止成分をいわゆるネガティブリスト化して、同時に特定成分の配合可能成分をリストにする、ポジティブリストが採用されました。

2002年に改正され2005年に施行された承認と許可制度は、海外との整合性や科学技術の発展によって、当時の法律では対応が難しくなったのが見直しの切っ掛けです。

改正でバイオゲノムやナノテクに対応できるようになっています。

改正から施行まで3年の時間がある理由は、従来の規制が大幅に見直された大改正で、周知期間を設けた為です。

薬事法の見直しは医療機器の安全対策や、製造販売後の安全対策強化にも及び、製造販売業者は製品の品質にも責任を持つようになりました。

いわゆる補聴器やコンタクトレンズに関する法律も改正されています。

2006年には医薬品販売の規制緩和が行われ、2009年の施行によって大幅に医薬品の流通が改善することになります。

この改正では一部の医薬品に限り、薬剤師が不在でも販売できるようになりました。

一般医薬品はスイッチOTCの第一類や、風邪薬などの第二類に、ビタミン剤が該当する第三類と分けられます。

しかも、薬剤師の常駐するインターネット通販でも、これらの医薬品が販売できるようになっているのが画期的です。

近くにドラッグストアがなくても、インターネット通販で安全に薬が購入できるのは、利便性や入手性の点において魅力があります。

薬事法ドットコムは2013年にも改正されていますが、医療用のソフトウェアに関するもので、医療機器のIT化に対応する為の見直しです。

これが近年に見直された最も大きな改正で、以降はそれまでの法律で運用中です。

改めて考えてみると、江戸時代から明治大正昭和と時代が変わり、戦前や戦中を経験して今の法律が成り立っています。

時代によって重視された規制が異なったり、見直された部分が違うのは面白いですが、今も変化に合わせて度々改正されるのは昔と変わらない共通点です。

今のところ、インターネット通販では広告における表現が規制され、効果があると思われる誤解を招く表現を用いることは不可能です。

そういう部分もやはり、時代に合わせて見直されたルールで、消費者が安心して医薬品を購入する為の仕組みだといえるでしょう。

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